アンテナ測定器 その7 【防災行政無線の受信】

<2012年08月18日>
戸別受信機の受信改善法

【屋内用簡易ダイポールアンテナの製作】


 飛騨山脈の支脈に囲まれ、豊かな自然が残り、四季折々の変化を見せてくれる飛騨地域。
 しかし、自然の恵みとは裏腹に、近年は局地的な豪雨、台風、地震、豪雪など忘れたころに災害がやってくる。

 この災害緊急時に重要な役割を担うのが「防災行政無線(同報無線ともいう)」。
 後述する免許方針により、行政の役割として屋外拡声子局は設置されるが、戸別受信機まで設置されていない自治体も多い。

 実用的には屋外設備だけでは放送内容が聞き取れず、いざ災害というときに役に立たなかったという話が時々メディアで話題になっている。
 平常時は放送がうるさいという苦情話もあるが、やはり戸別受信機は必要だと思う。

ロッドアンテナ受信
 我が家にも戸別受信機が設置されており、内蔵のロッドアンテナで受信している。
 しかし、家庭内の電化製品からのノイズや季節によって受信状態が変化し、時には終話信号が受信できずザーッとノイズ状態になることも。。。

 というのも、我が家は中継基地局から約10km離れているため弱電界なのだ。
 防災行政無線の免許方針では、各地域にある屋外拡声子局(屋外トランペットスピーカー)に対しての受信状態で送信出力が決まる。

 戸別受信機は、屋内に設置されており通常は内臓のロッドアンテナで受信しているため、八木アンテナで受信する屋外拡声子局に比べ受信環境は悪くなる。
 特に、我が家のような弱電界地域ではその差が顕著になる。
 
 受信改善の方法として、屋外アンテナを設置すれば"感度良好"となるのだが、60MHzのアンテナはサイズが大きく、家屋に配管設備がなければ壁に穴を開けての露出配線となってしまうので、あまりやりたくない。




3C-2V F型コネクタ 差し込み型コネクタ

 そこで、屋内用に簡易的なアンテナを製作し受信状況が改善できるか実験してみた。
 アンテナの材料はホームセンターで手に入るものばかり。
 「同軸ケーブル(3C−2V)」と「差し込み型コネクタ」。
 コネクタについては、受信機との接続がしっかりするので、当たり前のようにF型コネクタで工作した。

 ところが、接続がしっかりしているのがかえってよくないらしい。
 防災のための受信機なので、緊急時に外へ持ち出すときに、ネジ式では同軸ケーブルを外しにくいので、差し込み型コネクタにしなければならないらしい。


製作した簡易ダイポールアンテナ

 工作は、カッターナイフとペンチがあれば誰でも手軽にできるように、今回の簡易ダイポールアンテナは、エレメント部と給電部を分割せず、同軸ケーブル1本で製作した。
 わざわざ製作の仕方を書くほどの内容ではないのだが、一応。。。

 1.我が家の受信周波数は「68.22MHz」なので、短縮率を考慮しない1/4λは≒1.1mとなる。
 2.同軸ケーブルの先端より1.1mのところで切り込みを入れ、保護被覆を剥く。そのとき、網組み銅線を傷つけないよう気をつける。
 3.保護被覆を向いた箇所で、網組み銅線(外部導体)をほぐして、ポリエチレン(誘導体)を引き出す。
 4.同軸ケーブルの先端に、差し込み型コネクタを取り付ける。
 5.網組み銅線とポリエチレンを左右に分けると、写真のような簡易型ダイポールの出来上がり。
 6.電波は垂直偏波なので、柱に垂直に設置する。


 コネクタ部の工作が面倒だという方は、コネクタ付の同軸ケーブルを購入し、片側のコネクタを切断してエレメント用に工作すれば楽ちんかも。





柱にアンテナを設置   アナライザ測定

 この状態で戸別受信機に簡易ダイポールアンテナを接続し、定時放送を受信してみると"感度良好"となり、にんまり。

 送信アンテナではないので記事オシマイでもよいのだが、無線ブログなので一応アナライザで測定してみる。 

変換ケーブル
 
 しかし、差し込み型コネクタではアナライザと接続できないので、F型コネクタとM型コネクタの変換ケーブルを作った。




60.739MHz測定   60.222MHz測定

 仮設状態で測定すると「f=60.739MHz R=25 X=0 SWR=1.9」。
 f=60.739MHzの1/4λを計算すると、≒1.23mとなる。
 受信周波数1/4λ≒1.1mと比較すると、短縮率は89%ということになる。

 あとはエレメント部が短くなる方向に、カットアンドトライで切り詰めながら測定を繰り返す。
 受信周波数付近での測定結果は、「f=68.222MHz R=37 X=8 SWR=1.4」となった。

 エレメントの片方は網組み銅線、もう一方はポリエチレンだし、アンテナも空中設置でなく壁に密着するので影響も多い。

 外部アンテナ受信

 一応受信周波数に同調したということにして、戸別受信機に接続し定時放送を受信してみる。
 受信ノイズも減少し、音質もクリア。

 通常は測定器はないので、実質的には90cm〜1mの範囲内で同軸ケーブルを分割すれば問題なく受信感度が向上すると思う。
 製作費も数百円におさまる。

 これで、戸別受信機の屋内用簡易ダイポールアンテナの完〜成。。。




 

 
 

コメント(5)

 初めまして。『同報無線』『アンテナ』で検索していたところこちらのブログを見つけました。
 実は祖母の家の同報無線が夜だけ音が入らなくなりました。役場の人に来てもらって無線機を取り替えたりアンテナをかまったり、放送を聴いてもらったりしたのですが、昼間はよく聞こえるのに夜だけ全く入らないのです。
 外部アンテナ工事になると大掛かりになるし、なんとか室内ダイポールアンテナを作って取り付けてみようと此方のブログに書かれてあるようにホームセンターで同軸ケーブルを買って来て1.1mの長さで2分してFコネクタに繋いでみたのですが全く効果が出ません。
 垂直にたらすのが天井まで低いのでだらーんとなるのが悪いのでしょうか?
 例えば1.1mの半分の55cmとかではダメですか?
 あと、色々調べていたら無線機のアンテナにフェアライトコアというのを挿したら雑音が減ったという記事を見つけましたが同報無線機にも効果はあるのでしょうか?
 無線とか全然詳しくない孫が作ったアンテナでも祖母は期待しているようで女の子やのにすごいねぇと言われて当方一生懸命頑張っております。
 どうかご教授の程宜しくお願いいたします。

吉城ゆか様
 つたないブログにコメント頂き恐縮しております。
 同じように簡易アンテナを製作されたのに効果がなかったとのこと、役に立たずに申し訳ありません。
 だめもとの話ですが、
①設置場所は2階の方が改善されると思いますが、ご高齢の方では多分意味ないですよね。
②同じ1階でも、中継局方向に近い位置で受信状況を探ってみる。
③戸別受信機は外部ノイズに弱いので電子機器から遠ざける。
④逆に受信機を電子機器に近づけてノイズ源を探す。(夜間は各家庭でテレビ・ボイラー・レンジなどノイズで一杯になりそうです。)
⑤アンテナ系同軸またはAC電源ケーブルをフェライトコアに巻くというのもありそうですが専門的で?です。
⑥我が家で柱に垂直に張り付けたものを再実測したら、エレメント部分は片側90cmで両側全長180cmでした。(アンテナの同調周波数は68.5MHzで同報無線周波数よりほんの少し高めでした。)
⑦垂直エレメントの配線は我が家と逆のほうが良いかもしれません。(ポリエチレン心線が上方向、網組み銅線が下方向)
   
 いづれにしても放送時間内で受信機が開放されている時でないと試験できないので大変です。
 やはり外部アンテナが一番効果があると思いますが・・・。
 結局、何の役にも立たない話ですがご了承ください。

早速のご回答ありがとうございました。

祖母宅でできそうなことは
①は一階の居間に付けたいとの希望なので②の中継局に近い方にアンテナを向けてみます。
③④は受信機は壁着けしているのですが隣には神棚しか置いてないのですが、テレビやレンジや冷蔵庫は近くに無いので不思議です。
⑤については色々研究してみます。
⑥⑦については少しでも短くてできるならやってみようと思います。
簡易アンテナについて沢山アイデアを出していただき嬉しかったです。
本当にありがとうございました。

別件ですが、私も『君の名は。』見てきました。
無線機の同じものが映った時は心の中で小躍りしてしまいました。

457.550MHzの送受信用のダイポールアンテナを作製したいのですが同じ作製方法でも作製できますか?

郡司大寛さん
 つたないブログをご覧いただきありがとうございます。
 お問い合わせの周波数帯の製作経験がありませんし、また、簡易ダイポールでは実現性がないような気もします。
 お役に立てず申し訳ありません。
 

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